DataRobot 導入事例「トーシンパートナーズグループ」~全社 AI 化で"不動産の新しい価値"を提供し続ける企業へ~

「不動産の新たな価値を創造し、一人ひとりの豊かな暮らしと、活力ある社会を実現する」というビジョンを掲げ、都心部および横浜、川崎などのエリアを中心に不動産の企画・開発、販売から賃貸管理までを行っている、トーシンパートナーズグループ。全社 AI 化に向けた課題は「蓄積された膨大なデータをどう活用するか?」というものだった。果たしてトーシンパートナーズグループはこの課題にどう向き合ったのか?今回は、トーシンパートナーズグループの秋山様、松本様、飯沼様、二宮様に DataRobot 導入の経緯を伺った。
聞き手

デジタルテクノロジー&ソリューション事業部 AIソリューション部
デジタルテクノロジー&ソリューション事業部 営業部
デジタルテクノロジー&ソリューション事業部 AIソリューション部
ベテラン営業マンのノウハウを新入社員にー全社 AI 化への道のりー
― まず初めにトーシンパートナーズグループ様が予測 AI ツールを導入するに至った経緯をお聞かせ願えますか?

情報システム部 システム企画課 課長
グループ中核の不動産デベロッパーであるトーシンパートナーズは今年で設立35年(1989年 創業)を迎えました。当社グループの強みは、自社ブランドの不動産の企画、開発、販売だけに留まらず、賃貸管理、建物管理といったバリューチェーンをグループ内で構成しているところにあります。ビジョン実現のために取り組んでいる全社戦略の中で、DX 推進、データドリブン経営に向けて、これまでグループ内に蓄積されたデータや、長年の経験等のノウハウをどう活用するかが課題となっておりました。社内的にも AI の助けが必要であるという機運が高まってきたことからソリューションの導入に至りました。
― グループ内に蓄積された長年の経験とは具体的にどのようなことを指すのでしょうか?

プロパティマネジメント部 審査事務課 課長
(トーシンコミュニティーは賃貸管理会社として、入居者募集の業務を行っています)例えば新築物件であれば経験が浅い社員でも、現場を見て「このぐらいの賃料で、こういうお客様をターゲットにしよう」など比較的すぐにプランを立てられるのですが、中古物件ではなかなかそうもいきません。その物件の特徴や周りとの比較、それらを加味した上でベテランは商談を進めるわけですが、そのノウハウを新入社員に伝えるのが難しく、何とかデータ化できないものかということはもともと考えていました。
― 数あるソリューションの中から DataRobot を選ばれた理由はどこにあるのでしょうか?
"AutoML(※1)でツール自体は比較的簡便に使えるもの"という条件で、何社かのソリューションを拝見しました。その中には DataRobot より簡易なものもありましたが、モデルを複数作り、その中で最適なものを選べたり、選んだものを運用していく一連のプロセスを一気通貫で扱えるところに魅力を感じました。あとは、そもそも何から手をつければ良いのかわからない状況で、プリセールスの段階から NSSOL さんが「データドリブン経営を実現していくために必要なステップ」など今後の方向性等、色々と提案してくださったところも大きかったですね。
※1 AutoML:Automated Machine Learning の略。自動機械学習のことを指す
― DataRobot を導入する以前は、どのような課題感を感じていらっしゃいましたか?
中古物件ですと、10年前、5年前、2年前など、その時々で賃料の相場自体が変動しますし、価格を決める際には過去の価格や現在の周辺物件の価格などを加味して価格を設定する必要がありましたが、DataRobot 導入後は過去及び直近の情報で学習した AI モデルを使い、業務負荷を下げることが出来ていると思います。
テーマは「早期賃貸付け」。DataRobot 導入の効果は?
― AI を導入する際、"まずどこから手を付けるか"頭を悩ませる企業が多い中、トーシンパートナーズ様は初期から「早期賃貸付け」(※2)でいきましょう、と決められていたかと思います。数あるビジネスの中から「早期賃貸付けでいこう」と決められた理由を伺えますか?
※2 賃貸付け:「物件」と「入居者」をマッチングさせること。早期賃貸付けは空室期間を低減させるため、できるだけ早く、物件と入居者を結びつけることを指す
グループ全社的に AI の導入を進める中で、機能戦略上の課題を起点に、"データモデリングのツールを使えば、今ある課題が解決するのではないか"というものをピックアップし、その中で個別にヒアリングしていくなかで、一番実現可能性が高かったものが早期賃貸付けでした。ですから、最初から決めていたというよりは、話していくうちに見えてきたという感じです。NSSOL さんからいただいたテーマ定義シートも役に立ちました。
― 実際に DataRobot を導入してみて、早期賃貸付けに対して成果が出ているという実感はありますか?

プロパティマネジメント部 募集営業課 主任
もともとこの取り組みを始めた時点で、早期賃貸付けでは結構苦労していたのですが、そこは随分と改善されてきました。何よりも DataRobot を使って募集開始の条件を決めたり、変更をしたりということを通常フローに組み込んだことで、タイムロスがなくなり、成果につながっていると実感しています。
― モデリングを進めるにあたって、情報システム部と業務部門とのやり取りで苦労されたことはありますか?

情報システム部 システム企画課
AI のモデルを作るためには、過去実績となる特徴量と呼ばれる項目が必要で、「早期賃貸付けに寄与する情報をどれだけ集めれば良いのか?」というところからスタートしたのですが、システム側の方で 20 ~ 30 個くらい特徴量を用意してみたものの、業務部門から「これはいらない」と言われたり、そのあたりのすり合わせが大変でした。過去のデータをやみくもに並べるだけでなく、やはりそこはベテランの知見が必要だなと感じました。業務部門とシステム部門で二人三脚で進めていくことが重要でした。
DataRobot の取り組みが DX セレクション準グランプリ受賞に大きく寄与
― このたび DX 認定を取得されたと伺いました。
DX 認定はトーシンパートナーズホールディングスが取得したのですが、グループ全体での戦略と体制を構築して DX に取り組んでいく、全社で DX に取り組むことの本気度を内外に示していくうえで重要な取り組みだと考えていました。
― トーシンパートナーズホールディングスさんは DX セレクション(※3)でも準グランプリを受賞され ました。おめでとうございます。
ありがとうございます。DX セレクションにおいては、グループ全社で DX を推進する組織、体制構築の取り組みを総合的に評価していただいたと認識していますが、これまでの経験から得られた仮説を、蓄積されたデータによって紐解き、活用する DataRobot による取り組みは、データドリブンな組織へと変革する第一歩として、DX セレクションでの準グランプリ受賞に大きく寄与したと感じています。
※3 DX セレクション:経済産業省により、中堅・中小企業等の DX 推進及び各地域での取り組みの活性化を目的に2022 年から開始。トーシンパートナーズホールディングスは、DXセレクション 2024 の準グランプリに選出
― DataRobot を用いての早期賃貸付けについて、社内・グループからどのような評価を受けていますか?
グループの中で年に 1 度、年間表彰というグループ社員が一堂に会するイベントがあります。その中で、自分たちが日々、取り組んでいるプロジェクトを表彰する機会があるのですが、今回の早期賃貸付けプロジェクトをエントリーした結果、優秀な取り組みとして受賞することができました。グループ内でもかなり認知されたのではないかと思います。
「教わる」から「自分たちで」。内製化への第一歩
― こちらのテーマはすでに実運用されていますが、情報システム部と業務部門とでコラボレーションしながらより良いものにしていこうという取り組みは現在も継続していらっしゃるのでしょうか?
運用している中で少しの不具合やトラブルなどが出てくることはありますが、適宜連絡を取り合って、修正・改善しています。ちょうど現在、モデル改善の検討しているところで、定期的に打ち合わせを行っています。
― DataRobot は比較的ブラッシュアップのスピードが速い製品だと思うのですが、そのあたりはどのように感じられていらっしゃいますか?
気づいたら新しいタブができている、何だろうこれ?ということがよくあります。枯れないソリューションというところに魅力を感じています。
― NSSOL のサポート体制について、率直に「ここは良かった」「ここはもう少しこうしてほしい」などありましたら伺えますでしょうか。
我々は AI に詳しくない、NSSOL さんは不動産のことを知らない、という状況からスタートして、正直、最初は「これ本当にできるのだろうか?」と、半信半疑なところもありました。でもそこからNSSOL さんは、不動産業界について相当勉強してくださったようで、最終的には我が社の一員なのではないかと錯覚するくらい、専門用語もたくさん覚えてくださいました。たぶん、一筋縄ではいかないこともたくさんあったと思いますが、本当に根気強くやってくださいましたね。
AI 化は"不動産の新しい価値"を提供し続ける企業になるための第一歩
― 最後になりますが、トーシンパートナーズグループ様として、ひいては不動産業界をこんな方向に進めていきたい、というビジョンがあれば教えていただけますでしょうか。
今回の取り組みで単純に数字として成果があったというのはもちろん嬉しいことなのですが、その他にもデータドリブンの可能性や、我々が持っている"まだ活かせてないデータ"を利用すればもっと良い結果が生まれるのではないかということに気づかせてもらいました。ですから AI を継続的に使っていけば、他社に先んじて色々なことができるのではないか、お客様にもっと安心感を与えられる企業グループに発展していけるのではないかと感じています。これをきっかけにどんどん新しい価値を作っていきたいですね。ゼロから作るものもありますが、自分たちが持ってるものを掛け合わてできる新しい価値というものがある。今回の DataRobot を用いた早期賃貸付けプロジェクトがまさしくそうでしたが、こういう試みは今後も続けていきたいですね。これからも新しい価値を提供し続けられる企業グループになっていきたいですし、不動産業界もそうであってほしいと願っています。
