製造業の未来を変える世界基準のデータ管理とは|日本の製造業を支える日鉄ソリューションズの取り組み

製造業のITを用いたビジネス高度化が、世界中で急速に進んでいます。これまで日本の製造業は高い品質と技術で世界を牽引してきた一方で、ITやAIの導入を進める上では、そういった日本固有の企業文化が課題となってきた側面もあります。日本の製造業がこれからも世界で競争力を発揮していくためには何が必要なのか、製造業を取り巻くIT環境はどう変化しているかといった点について、2024年5月にドイツで開催されたHannover Messe 2024に参加した日鉄ソリューションズ株式会社 産業ソリューション事業本部の石井に話を聞きました。
―まずは、昨今の製造業の動向について聞かせてください。世界では製造業のITを用いたビジネス高度化が急速に進んでいますが、日本の製造業はどのような状況にあると考えていますか。
これまで日本の製造業のIT整備においては、企業の個別ニーズに合わせた最適なソリューションを整えることに注力してきました。そのため、現在使われているシステムの多くは、 現場の要望に応じてゼロから作られたものや、既成の製品(パッケージ)をカスタマイズして各社の業務に合わせたものが多くなっていますが、今後は変わっていく必要があると考えています。
私は2024年5月にドイツで開催された製造業の見本市 Hannover Messe 2024に参加をしましたが、そこでも次のようなことが話し合われていました。
今、世界中でGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)などの米国のITプラットフォーマーがITの世界における支配を強めていますが、欧州ではGAFAMの過度な支配からの脱却を図るため、2011年に開催されたHannover Messe 2011において「Industrie 4.0(※)」という構想が発表されました。この構想は欧州の製造業の発展を目的としていますが、その技術や理念は世界中に影響を与え、製造業の世界標準の一つとなりつつあります。
今回のHannover Messe 2024では、欧州におけるIndustrie 4.0の広まりや今後の展望について色々な話がされていました。そこで強く感じたのは、欧州が日本にとって重要な市場である一方、日本の製造業が欧州でビジネスを展開する際には、欧州の最新の動向や規則にも対応する必要に迫られているということです。
例えば、欧州には、個人データの保護を目的とした規則(GDPR)や、サプライチェーン全体の透明性を確保するための法律(サプライチェーン・デューデリジェンス法)、製造過程や製品で有害化学物質を使わないことを定めた規則(REACH規制)など、多くの法的基準が存在します。日本の製造業も、欧州で事業を展開する場合は、こうした規制・基準への対応が必要になります。また企業の枠を超えたデータの共有・相互利用を目指した「Manufacturing-X」といった製造業のデータ標準化の取り組みへの対応を可能にする仕組みや環境の構築も求められることになるでしょう。
―さまざまな分野において規制や標準が存在するのですね。SAPシステムはそれを支える基盤ということになるのでしょうか。
そうですね。Hannover Messe 2024では、SAP社がERPだけでなく、MES(Manufacturing Execution System: 製造実行システム)の強化も進めていることが強調されていました。
これは、さまざまな規制・データ共有への対応が必要になってきているため、製造領域におけるデータ管理の重要性が一層高まっていることを反映しているのだと思います。欧州全体として、従来のERPだけでは対応しきれない製造プロセスに関連するデータ管理が求められており、そのためにMESの強化が必要とされているということだと思います。
SAP社は長年ERP領域で強みを発揮してきましたが、欧州で製造業のデータ管理が重視されるようになったことから、SAP社もこのニーズに応えるためにMES領域での機能強化を進めているようです。
―日本の製造業でも、業界全体としてこうした世界の動きに対応するという方向に進んでいるのでしょうか。
進んでいかなければならないと考えています。
多くの日本の製造業では、各企業が自社の運用プロセスや業務フローに適したMESを独自に構築してきました。しかし、今後は国際的な基準や規制に対応したデータ管理が求められるようになります。先に申し上げた通り、SAP社はこのニーズに応えるために、MESの機能強化に注力しています。日本の製造業も、業界全体としてデータ管理についての見直しを進めていくことになるでしょう。
―それに対して弊社はどのようなサポートが出来るのでしょうか?
そうですね。弊社は日本製鉄を母体として製造業から始まった企業であり、製造業のデータ活用に関する豊富な知見を持っています。これは弊社の強みです。長年にわたりERP領域で実績を築いてきましたが、それに加えてMESやPLMの領域でも豊富な経験があり、製造業が保有するあらゆるデータを統合した活用の仕組みを、ユーザーの立場で共に考え提供できる数少ないSIerの一つだと自負しています。
今後も、日本の製造業に合った、お客様固有のニーズを踏まえつつ、国内外の動向や技術の進化にも柔軟に対応できる最適なシステムを提供することを目指していきます。

産業ソリューション事業本部
営業本部 ソリューション推進部 エキスパート
(※)Industrie 4.0とは
Industrie 4.0は、2011年にドイツ政府が提唱した製造業の高度化を推進する構想で、第4次産業革命とも呼ばれています。この構想では、IT技術やビッグデータを活用して製造業のプロセス全体をデジタル化し、リアルタイムで状態を把握し変化に応じて柔軟に最適な状態に自動的に対処することを目指しています。これにより、生産性の向上だけでなく、品質の改善やコスト削減、柔軟な生産対応も実現することを目指しています。現在では欧州全体に広がり、国の枠を超えて製造業のビジネスのあり方に大きな影響を与えています。