クラウドでSAP社のERPシステムを利用する方法は?導入メリット、注意点を解説

クラウドでSAP社のERPシステムを利用する方法は?導入メリット、注意点を解説

クラウド技術の進化により、企業がERP(Enterprise Resource Planning)を導入する際の選択肢が広がりました。とくに、SAP社のERPシステムは、クラウド環境での導入が可能になり、オンプレミスと比較して柔軟性やコスト効率が大幅に向上しています。本記事では、クラウドでSAP社のERPシステムを利用する方法や、そのメリット、注意点について解説し、企業事例を紹介します。



クラウドでSAP社のERPシステムを利用する方法

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SAP社のERPシステムは、クラウド上での利用もできるようになっており、さまざまなオプションが用意されています。クラウドでSAP社のERPシステムを利用する主な方法は以下のとおりです。

【クラウドでSAP社のERPシステムを利用する方法】

  • SAP S/4HANA
  • RISE with SAP

以下でそれぞれについて順に解説していきます。

SAP S/4HANA Cloud

そもそもSAP S/4HANAとは、SAP ECCの後継として2015年に発表された次世代のERPであり、高速なデータベースを刷新されたUIにて提供しています。SAP S/4HANA Cloudは、SAP S/4HANAのクラウド版であり、SaaS型モデルとして提供されています。SAP S/4HANA Cloudは、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloudなどのクラウドプラットフォームを利用することで、初期導入コストを抑えながら、迅速にERPシステムを導入することが可能です。さらに、クラウド環境上での運用により、システムの最新機能やセキュリティ対策が自動的にアップデートされるため、企業は常に最新のテクノロジーを活用することができます。SAP S/4HANA Cloudは、オンプレミス環境の維持管理が難しい中小企業や、ITリソースが限られている企業にとって、効率的かつ柔軟にERP導入を検討できる選択肢の一つとなるでしょう。

RISE with SAP

RISE with SAPは、上述したSAP S/4HANA Cloudを中心に複数のSAPソリューションをまとめて提供しているクラウドサービスです。SAP社が提供するさまざまなツールやサービスが含まれており、導入から運用までを一括で対応してもらうことが可能です。RISE with SAPは、今後お使いのERPシステムからの移行を検討する場合などに、さまざまな費用が含まれていることからメリットを享受しやすいでしょう。

クラウドでSAP社のERPシステムを導入するメリット

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クラウド環境でSAP社のERPシステムを導入することで、企業はさまざまなメリットを享受することが可能です。具体的なメリットは以下のとおりです。

【クラウド環境でSAP社のERPシステムを導入するメリット】

  • 企業規模や事業に合わせて柔軟に対応できる
  • アップデートが自動で実施される
  • データを一元管理できる

以下でそれぞれについて順に解説していきます。

企業規模や事業に合わせて柔軟に対応できる

SAP社のクラウド型のERPシステムは、企業の規模や業務内容に応じて柔軟に対応できます。たとえば、成長中の企業が新たな事業を展開する場合でも、拡張性に優れているため、柔軟に対応できます。また、複数の拠点や海外事業を持つ企業にとって、クラウド環境でのERP導入はリアルタイムでのデータ共有や迅速な意思決定に寄与するでしょう。

アップデートが自動で実施される

クラウド型のERPシステムでは、システムのアップデートが自動的に行われるため、常に最新の機能やセキュリティ対策を利用することができます。これにより、企業は手間をかけずにシステムの保守管理を行うことができ、重要な業務に集中することが可能になります。たとえばSAP S/4HANA Cloudは四半期ごとに機能アップデートが実施され、常に最先端のテクノロジーを活用できます。

データを一元管理できる

クラウド型のERPシステムを導入することで、企業の各部門が持つデータを一元管理することができます。これにより、部門間での情報共有が円滑になり、全社的なデータの可視化が可能となります。たとえば、販売データや在庫情報、財務データを一元管理することで、経営陣はリアルタイムで現場と経営全体の状況を把握し、迅速な意思決定を行うことができるようになるでしょう。

クラウドでSAP社のERPシステムを導入する注意点

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クラウドでERPシステムを導入する際には、以下の点に注意しましょう。

【クラウドでSAP社のERPシステムを導入する注意点】

  • 導入の目的を明確にする
  • サポート体制を構築する

以下でそれぞれについて順に解説していきます。

導入の目的を明確にする

クラウドERPを導入する際には、まずその目的を明確にすることが重要です。たとえば、業務の効率化やコスト削減、顧客満足度向上など、導入する目的によって必要な機能は大きく異なるため、企業のニーズに応じた導入計画を立てる必要があります。自社の経営や業務プロセスにおける課題を洗い出し、導入目的を明確にすることで、最適なシステム構成やカスタマイズが可能となるでしょう。

導入依頼先のサポート体制を確認する

クラウドでERPシステムを導入する場合、SIerなどパートナー企業にシステムの導入を依頼することが多いでしょう。この時に、クラウド型のERPシステムは初期だけでなく中長期的な運用計画やそれに基づく改善が重要です。導入後のサポートも伴走してもらえる体制のある依頼先かどうか確認しましょう。また、クラウド型のERPシステムは定期的なアップデートが行われるため、運用中のサポートが必要となる場合があります。そのような観点からも導入後の運用を円滑に進めるためにも、導入依頼先の選定は慎重に行うと良いでしょう。

クラウドでのSAPシステム導入事例:日本製鉄株式会社

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日本製鉄株式会社は、国内外での製鉄事業を効率化するために、SAP S/4HANAを導入し、財務関連業務のプロセス改革を進めました。同社は従来の自社開発システムからの脱却を図り、各製鉄所の財務業務のグローバル標準化や、全社的なトランザクション処理の集約・自動化を目指しました。この改革において、SAP S/4HANAは財務業務の標準化を実現し、グローバルでのデファクトスタンダードとして高く評価され、同社の主要な財務プロセスにも適合することが確認されたため、導入が決定されました。

参照元:日本製鉄、財務業務システムに次世代ERP「SAP S/4HANA®」を採用

まとめ

クラウド環境でのSAP社のERPシステム導入は、柔軟性やコスト効率の向上、そして最新技術の迅速な適用など、多くのメリットがあります。とくに、SAP S/4HANA CloudやSAP Business ByDesignは、企業の成長や事業のニーズに応じたスケーラブルなソリューションを提供し、リアルタイムでのデータ処理と一元管理が可能です。また、定期的な自動アップデートにより、最新のセキュリティ対策や機能を手間なく利用できる点も、クラウド型ERPシステムの大きなメリットと言えるでしょう。実際に導入をするとなった場合には、導入目的を明確にし、導入依頼先に適切なサポート体制があるかなどが重要です。中長期的に方向性のズレなく最適な運用ができるよう、本記事で解説した事項を中心として入念に確認しましょう。

日鉄ソリューションズでは、SAP社のERPシステムに対するトータルサポートサービスを提供しております。経験豊富な基幹系業務コンサルタントとSAP認定資格数100超の技術者が、SAP導入から運用保守までご支援させていただきます。SAP社のERPシステム導入・移行をご検討の際には、ぜひ日鉄ソリューションズにお問合せください。

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