IoHが変えるモノ作り IoHの実現方法

IoHが変えるモノ作り IoHの実現方法

製造現場ではモノとインターネットをつなぐ技術、IoT(Internet of Things)が普及しつつあります。インターネットを活用することにより、モノ作りの効率は飛躍的に上がりました。そして、インターネットの持つ力はモノにだけ恩恵を与えるものではありません。現場で働く「人」にもインターネットは力を発揮します。

今回は人とインターネットをつなぐ技術、IoH(Internet of Humans)についてご紹介します。


IoHとは?ヒトとインターネットをつなぐ

IoHの定義

IoHは「ヒトのインターネット」と呼ばれ、その名の通り人間とインターネットがつながることを指す概念です。現在では、さまざまなデバイスを通じて人は意識しないうちにインターネットとつながっています。PCやスマートフォンといった機器から、時計や衣服といった身につける物からもインターネットを通じて、その人の状態や行動などがデータとして蓄積されています。

得られる情報は、位置情報や行動パターン、体温や血圧といった身体の状況、趣味嗜好などさまざまで、こうしたデータは、健康の向上や企業のマーケティング活動のために使われます。このように、インターネットを介して人から収集したデータを利用することがIoHだと言えるでしょう。

IoTとの違い

似た言葉として、IoT(モノのインターネット)があります。大きな違いとしては、IoTが、製造機器や家電などの「モノ」からデータを収集するのに対して、IoHは「ヒト」からデータを収集する点です。

一方、IoHとIoTは、情報を得る対象が違うだけであってデータを得るという目的は同じです。また、同じような概念としてIoC(Internet of Customers:顧客のインターネット)や、IoD(Internet of Digital:デジタルのインターネット)、IoA(Internet of Ability:能力のインターネット)といったものもあり、さまざまな対象からデータを得て活用する社会が進んでいます。

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IoHでできること

人とインターネットをつなぐIoHは、作業現場でも活躍します。主にメリットとなる安全性の確保と作業効率の点から、具体的に見ていきましょう。

作業現場の安全性確保

工場で働く従業員一人ひとりの状況確認は、安全確保のために欠かせない項目です。しかし、多くの従業員を常時監視することは容易ではありません。危険な場所で作業をしていないか、体調不良になっていないか、適正な人数で作業しているか、など確認項目は多岐にわたります。

また、従業員の体調管理は目に見えてわかりづらいもので、体調不良を起こしている本人すら気づいていない場合もあるでしょう。さらに、危険に関しても人の目や感覚では感知できないものも多く、小さなミスや不注意の積み重ねで重大な事故が発生することがあります。そのような、従業員の安全確保や事故防止にIoHは力を発揮します。

従業員が使用するスマートフォンや、身につけている時計、眼鏡、作業着などに取り付けられているセンサーなどから従業員の体温や血圧、従業員の現在位置や体勢などといった情報がデータとして集められ、管理者に送られます。従業員は正しい状態で作業しているか、心身に問題がないかといったことを、管理者はリモートで一括管理することが可能です。

また、データとして集められた各種状況が、数値やグラフィックといった具体的な指標によって可視化されることにより、従業員一人ひとりの状況を容易に把握することができます。

作業効率の向上

安全性の確保とともにIoHのメリットとなるのが、作業効率の向上です。効率的な作業をするためには、多くの情報が必要となります。従業員が身につけている端末から、作業がどのような方法で行われているのか、正しい作業と誤った作業ではどの程度効率に違いがあるのか、一番効率がよい作業は何なのかといったデータが収集・蓄積されます。蓄積されたデータはAIによって分析され、より効率的な作業をするためにはどうすればよいかという改善案につながり、それを実践することにより作業効率が向上します。

誤った作業をしていると作業効率が落ちるだけではなく、従業員の怪我にもつながります。作業効率の最適化は、作業中の体勢といった部分までも改善することにより従業員の負担が減ることになります。身体への負担が減ることにより、作業効率はさらに上がるでしょう。

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IoHの実現方法

導入することでさまざまなメリットがあるIoHですが、具体的にどのように導入していけばよいのでしょうか。導入するための進め方をご紹介します。

まずはIoTを進める

現場で作業するには人の力が必要ですが、多くの作業機器を効率的に活用していく必要もあります。作業機器に取り付けられたセンサーからデータが集まり、それらを分析することにより作業効率を上げたり、安全対策を進めることができます。そのデータを集めるためにはIoTの仕組みが必須となります。

IoTを進めていくためには、センサー類の設置も必要になりますが、何よりインターネットとつながる環境が必要です。IoHもIoTもインターネットを活用する技術です。IoTを進めてインターネット環境が整えば、それをさらに一歩進めることによりIoHの実現が容易になり、IoTを運用する上で培われる経験はそのままIoHに活かすことができます。

スモールスタート

具体的にどのようなデータが役に立つのか、どのような場所でデータが必要になるのかは、各工場によって違います。はじめから完全なシステムを構築することはできません。まずは、始められる場所からIoHの仕組みを構築し、データを集めることが重要です。集めたデータ全てが役立つ情報とは限りませんが、データがない限り何が必要な情報で何が不必要な情報か分析することは不可能です。データを活用するためには、集められたデータをもとにPDCAサイクルを回し、どのようなデータが役に立つのか、どのようなデータが今後必要になるのかを見極める必要があります。

まず何が必要と思われるかを考える(Plan:計画)、実際にセンサーなどからデータを集めて分析してみる(Do:実行)、分析したデータは役に立つのか、他に必要なデータは無いのかなどを見直す(Check:評価)、不必要と思われるデータ収集をやめ、他に必要なデータを集める(Action:改善)といった具合に、最初から完璧を目指すのではなく、何度も小さく繰り返して本当に必要な情報を得て活かせる環境作りが必要です。

まとめ:モノとヒトがつながる新たなモノ作り環境へ

インターネットを活用したスマートファクトリー化が多くの製造業で進むなか、ヒトもモノも例外なくインターネットにつながっていきます。インターネットを介して全てがつながることによって実現可能なことは非常に多くあります。今後、IoTが進む中で同時にIoHも進んでくるでしょう。

日鉄ソリューションズでは、スマートファクトリーやスマートプロダクトが進む社会で、IoX導入に関する適切なアドバイスなどを提供しています。