工場における安全対策―事例を交えながらリスクの中身と対策について解説

工場における安全対策―事例を交えながらリスクの中身と対策について解説

グローバルな競争激化もあり、製造業でも利益追求のためにさらなる作業の効率化が求められています。しかし、利益や効率化ばかりに目を向けて現場の安全対策をおろそかにしていると、思わぬリスクにさらされることになります。特に製造業では、重量物や危険な化学薬品、各種機器の取り扱いなど、一歩間違えれば重大事故につながるものが多く存在しており、安全対策は非常に重要です。
この記事では、事故を防ぐための具体的な対策や事例を紹介していきます。


工場での労働災害防止の対策

工場での労働災害防止には、さまざまな対策が講じられています。具体的な例をいくつか挙げながら解説します。

基本的な作業環境の整備

作業環境を見直すことは、労働災害防止を講じるうえで重要な項目となります。高温多湿な環境での作業は、夏場であれば熱中症へつながる恐れがあり、それ以外の季節でも従業員の疲労が蓄積し、ヒューマンエラーの発生率が高まります。

環境については物理的な面だけではなく、メンタル面での配慮も欠かせません。作業員のストレスによるミスが重大事故につながる危険性もあることから、従業員の作業環境を快適なものに整備することは、特に重要となります。

5S活動の実施

5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)をしっかり行うことにより、労働災害防止の効果が高まります。不要なものの整理を怠ると、転倒事故や物品の落下、移動中のつまずきによる転倒事故などにつながり、不十分な清掃からは機器の不具合を引き起こすこともあります。

5S活動は、その場限りではなく持続していくことが重要になるため、日ごろから指導を繰り返し、5Sを現場に定着させることで、安全意識の向上にもつながります。

ヒヤリハット活動

ヒヤリハットとは、厚生労働省によると「危ないことが起こったが幸い災害には至らなかった事象」を指しています。重大な事故には、それに至るまで「ヒヤリとしたりハッとしたり」するような危険が積み重ねられているとされており、そうした危険事例を集めて事故防止につなげることが、ヒヤリハット活動です。

ヒヤリハット活動は、従業員一人ひとりがどんな危険が身の回りに潜んでいるかを知ることに寄与し、安全意識を高め、重大事故を予防することに効果を発揮します。

ヒヤリハット活動を通じて職場の安全パトロールに力を入れることや、危険予知訓練を定期的に行うことなども事故防止にひと役買います。

参考:兵庫労働局ヒヤリハット活動

ヒヤリハット活動については、こちらの記事でも詳しくご紹介しております。「事故を未然に防ぐ「ヒヤリハット」の意義」

見える化の推進

危険は見えないところにも多く潜んでいます。見えない危険を見える化することが、事故防止につながります。危険箇所に対して視認性の高い表示を施したり、監視カメラを用いて作業を外部から見える化したりと、方法は多岐にわたります。

また、高温や酸欠状態などの見えない危険に対して、数値化という形で見える化することも安全対策のひとつとなります。


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工場で起こり得る事故の事例

工場作業ではさまざまなリスクが想定されますが、具体的にどのような事例があるのでしょうか?いくつか事例を挙げていきます。

はさまれ・まきこまれ

動力機械などを取り扱っている場合、はさまれ・まきこまれのリスクが存在します。こちらが事故の一例です。

参照:厚生労働省事故事例はさまれ・まきこまれ:「ロール機を清掃する際、運転停止操作後の惰性で回転中のローラーに、手の指が巻き込まれた」

この事例では、機器の完全停止の確認不足や安全カバーのような対策がなされていなかったこと、危険に対する予測が不十分だったことにより、労働災害が起こっています。

工場で使われる機器は、取り扱いをひとつ間違えれば重大事故になり人命を失うことにもつながります。「このくらいなら大丈夫だろう」と安易な気持ちで作業をしないような教育をすることや、点検作業では機械を必ず止めるというルールを徹底し、それでも起こる万が一に備えて安全カバーをつけるというような対策が重要です。

転倒

普段の生活でもケガの危険性が伴う転倒事故ですが、工場ではさらに大きな事故につながりかねません。

参照:厚生労働省事故事例転倒:「台車に足を乗せたところ台車が動き出し、バランスを崩し、軸足の足首を骨折した」

こちらの事例では、台車を足で扱うという危険な行為が常態化しており、それが危険だという認識が甘かったこと、さらに適切な台車を用いなかったことが事故の原因となっています。

普段何気なく行っている作業のなかに、どんな危険が潜んでいるのか。この事例のように、一見「この程度」と思われるようなことでも重大事故につながることを、危険予知訓練を通じて現場作業員の意識に常に浸透させるようにしていくとよいでしょう。

墜落

墜落事故は、低所からでも命に関わる可能性がある大きな事故となります。

参照:厚生労働省事故事例墜落:「つり足場の組み立て中に崩壊し、墜落する」

墜落事故の主な要因としては、足場の不安定さや強度不足、適切な安全器具を装着していなかったことが挙げられます。

高所での作業は特に危険が伴い、2m以上の高所での作業では足場を組むことや、墜落防止用の安全器具を装着することが法令で義務づけられています。法令違反であること、重大事故につながることを安全教育で従業員に徹底していくことが非常に重要です。

安全対策の具体例

工場作業には、さまざまな危険が伴います。では、それを防ぐためにはどのように対策をすればよいのでしょうか?対策も多岐にわたりますが、ここでは主にデジタル化を用いた対策事例を紹介します。

携帯型の計測器の使用

夏場に特に多くなる労働災害である熱中症を防ぐためには、従業員の状態を常に把握しておくことが重要です。自分の状態は個人の感覚ではつかみにくいものですが、携帯型の計測器を使用することにより、WGBTと呼ばれる暑さに対する指数として、外部から客観的に把握することが可能となります。

危険な環境で作業していても、作業員は気づいていない可能性があります。そのような場合にはアラートを出して警告することで、適切な環境を保つことや休憩を取ることなどの対策につなげることができます。

ウェアラブルカメラ装着による巡回

各作業場で安全に作業が行われているか確認するためには、定期的な巡回が欠かせません。その際、ヘルメットにウェアラブルカメラを装着することにより、現場の状況を録画して危険の確認をすることや、巡回者当人だけではなく外部からも同時に現場の状況を確認することができます。

ウェアラブルカメラは手に持つことなく周りの状況を録画できるため、巡回中に何かあった際にも、とっさの対応が取りやすくなるという利点があります。

転倒検知器による転倒防止

転倒事故は、事故事例のなかでも上位に位置するものとなっています。特に一人作業の際に転倒事故が起こって発見が遅れると、重大な結果につながりかねません。非常時に、転倒状態を外部ですぐに把握するシステムを用いることで、いち早く異常に気付くことができます。

また、体調不良で倒れた場合でも、検知器で異常を周りに通知し、速やかに処置を施すことで従業員の安全を確保することが可能です。

死角となる場所へのカメラ設置

作業場には多くの死角が存在します。死角に対して効果的なのが、Webカメラを設置して外部から常に監視することです。

死角に何か危険が潜んでいないか、死角で作業をしている作業員は決められた規則どおりに仕事をしているかを監視することで、事故につながる行動を防ぐことができます。


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デジタル技術を活用した万全な対策で安全な現場を実現

工場の現場における安全対策についてご紹介しました。工場では常に、業務効率化とともに安全対策が求められています。すべての事故を完全に防ぐことは困難ですが、デジタル技術を活用した対策を講じることにより事故を未然に防ぐこと、あるいは重大な結果につながるのを防ぐことは十分可能です。

日鉄ソリューションズの「安全見守りくん」は、現場の作業員が携行するウェアラブルデバイスを活用することで、事故発生をいち早く検知し、重大な事故につながる前に対策を取れるソリューションです。安全で快適な現場づくりについてご検討の際には、ぜひ日鉄ソリューションズにご相談ください。