電子契約導入時に、契約文言、書式の変更は必要? | 電子契約
日鉄ソリューションズ株式会社
齋木康二
監修 宮内・水町IT法律事務所 弁護士 宮内宏
(2021年10月13日更新)
電子契約を導入する場合は、今まで利用していた契約書の文言などを電子契約用に修正する必要があります。今回は、契約書の文言や書式変更についてご紹介したいと思います。
契約文言の変更
「甲と乙は、本契約成立の証として、本書2通を作成し、両者記名押印のうえ、各自1通を保有するものとする。」従来の書面契約書はこのような文言が用いられていることが多いと思います。ところが、電子契約では、押印は電子署名で代替しますし、契約書ファイルはクラウド上に保存されます。電子契約を導入する場合には、従来の契約書の文言について変更が必要になりますのでいくつかご紹介します。
① 契約書前文の文言変更例
書面契約書「甲と乙は、本契約成立の証として、本書2通を作成し、両者記名押印のうえ、各自1通を保有するものとする。」
↓
電子契約書「甲と乙は、本契約の成立を証として、本電子契約書ファイルを作成し、それぞれ電子署名を行う。なお、本契約においては、電子データである本電子契約書ファイルを原本とし、同ファイルを印刷した文書はその写しとする。(※)」
(※)なお書は、税務調査を印刷した書面で受ける場合、原本が電子データであることを明示するために記載
② 契約書前文の文言変更例
書面契約書「第○条(再委託) 乙は、甲による事前の書面による承諾がないかぎり、本件業務の全部または一部を第三者に再委託できない。」
↓
「乙は、甲による事前の書面または双方が合意した方法による電磁的措置による承諾がないかぎり、本件業務の全部または一部を第三者に再委託できない。」
契約書書式の変更
契約書の文言だけでなく、契約書の書式の変更もお薦めしています。
お薦めの書式変更の一つとしては「押印位置を文頭に移動する」変更です。電子契約には押印は必要ないのですが、多くの場合電子署名を付与すると同時に、印影のイメージを契約文書につけています。電子署名だけでは、印刷した場合などに電子署名の有無がわからないので、電子署名付与の目印として電子署名と同時に印影イメージを付けるわけです。
文頭にすることで押印位置を固定化 = 設定が簡単
押印イメージの位置ですが、もし電子契約導入時に契約書の座標上で固定できれば、電子署名の都度いちいち指定する必要がなくなり、また多数の契約書に一括で署名する一括署名機能も利用できるので、電子契約導入のメリットを活用できます。しかし、契約書文末に押印する書式では、本文の長さは内容、交渉により変わるので、座標位置固定はできません。契約書の文頭に署名位置を変更することにより、座標位置を固定できるわけです。
特に注文書や請求書などを他システムと連携して大量に発行する文書の場合、都度座標指定するのは手間ですから、このような印影位置座標の固定は必須となります。
書面契約書(文末押印 都度位置指定)
文末押印の書式では、本文の長さが変わり押印位置を固定できない。
電子契約書(文頭押印 座標位置固定)
押印位置を文頭にすることで押印位置を固定化
電子契約導入のための20のヒント:目次
1. 法令
- 電子帳簿保存法:電子契約で税務調査に対応できるのか?
- 電子署名法:注文書や注文請書を本当に電子化して大丈夫か?
- 電子署名法:電子署名の証拠力
- 印紙税法:電子契約の場合、本当に印紙税を払わなくてよいのか?
- 下請法:下請法対応に関する注意点
- 建設業法:建設請負契約の電子化について
2. 技術
- 電子署名:電子署名・署名検証の作業イメージは?
- 電子署名:電子署名のしくみとはたらき
- 電子署名:電子証明書を選択する5つのチェックポイント
- 電子署名:長期署名について~10年を超える契約への対応~
- タイムスタンプ:タイムスタンプの効果としくみ
- EDI:電子契約とEDIは何が違うのか?