建設請負契約電子化に関する法令対応について | 電子契約

建設請負契約電子化に関する法令対応について | 電子契約

日鉄ソリューションズ株式会社
斎木康二

監修 宮内・水町IT法律事務所  弁護士 宮内宏

(2021年9月28日更新)

建設工事請負契約の電子化について

建設業界では、施主と建設業者や元請業者と下請業者の間で頻繁に建設工事請負契約が締結されています。建設工事請負契約は、締結数が極めて多く、また印紙税のかかる課税文書であることから、電子化することによって、契約書作成工数を削減するメリットや印紙税を節税するメリットが非常に大きく注目されています。電子契約の導入実績の最も多い分野の一つといえます。
ただし、建設工事請負契約の電子化については、関連する様々な法令、ガイドラインがありますので、以下に紹介します。

建設業法第19条

まず、建設業法第19条(建設工事の請負契約の内容)第1項では、建設工事請負契約に記載しなければならない内容(工事内容、金額、納期・・・)などが定められています。

次に同条第2項では、第1項の内容を書面に記載し、当事者が署名または記名押印をおこなうこととされています。建設工事請負契約は原則的には、書面契約です。

ただし、同条第3項に、「政令で定める相手方の承諾(要件1)」と「国土交通省令で定める措置(要件2)」を条件に電子契約を認めています。

建設業施行令第5条の5(建設工事の請負契約に係る情報通信の技術を利用する方法)

さらにその「政令で定める相手方の承諾(要件1)」について、建設業施行令第5条の5において「電磁的措置の種類、内容を示し承諾をうること」と「承諾は書面か電子でおこなうこと」が定められています。

建設業法施行規則第13条の4(建設工事の請負契約に係る情報通信の技術を利用する方法)

次に「国土交通省令で定める措置(要件2)」について、建設業法施行規則第13条の4(建設工事の請負契約に係る情報通信の技術を利用する方法)で、要件2の求める具体的措置として、以下2つの方法を定めています。

  • インターネットなどコンピュータネットワークを利用する方法または磁気ディスクなど媒体を利用する方法(要件2-1)
  • 「出力して書面作成可能、改変したら確認できる、契約の相手方が本人であることを確認できる」といった「技術的基準」を満たすこと。(要件2-2)

建設業法施行規則第13条の4第2項に規定する『技術的基準』に係るガイドライン(平成13年3月30日)」について

なお、上記要件2-2にある「技術的基準」については、平成13年3月30日に国交省より以下のガイドラインがでています。

1.見読性の確保について

  • ディスプレイ、書面に速やかかつ整然と表示できること

2.原本性の確保について

  • 公開鍵暗号方式による電子署名を用いること
  • 信頼できる第三者機関発行の電子証明書を添付すること
  • 非改ざん性を証明できるシステムを整備すること

グレーゾーン解消制度を利用した「技術的要件」に関する確認

近年「グレーゾーン解消制度」を利用し、上記「技術的要件」の内容をより明確化するための質問、回答が国土交通省サイトなどに掲載されています。ご参照ください。

https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/point/sosei_point_fr_000015.html

細かい規定がいろいろあるのね。でもよく読むと電子帳簿保存法や下請法の規定とほとんど重複しているわね。

「電子契約を行った場合の施工体制台帳の取扱いに関するガイドライン(平成17年3月3日)」について

ここまでの法令はすべて電子契約締結の要件に関するものでしたが、もうひとつ電子締結後の施工体制台帳の取扱いについてもガイドラインが平成17年3月3日に国交省よりでており、注意が必要です。

そもそも建設業者は、建設業法第24条の8により、施工体制台帳の作成し現場に保管することがもとめられ、その添付書類として発注者との請負契約書が必要です。

同ガイドラインでは、請負契約を電子契約で行った場合には、現場のPC、プリンタなどにより、電子契約の内容を紙面に表示できるという条件のもとで、施工体制台帳への添付を省略できるとしています。

施行体制台帳の取り扱いに関するガイドラインは忘れられがちなので、気をつけなければいけないんだ。

電子契約導入のための20のヒント:目次

1. 法令

2. 技術

3. 運用

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