電子契約導入時の下請法対応に関する注意点 | 電子契約

電子契約導入時の下請法対応に関する注意点 | 電子契約

日鉄ソリューションズ株式会社
斎木康二

監修 宮内・水町IT法律事務所  弁護士 宮内宏

(2021年9月28日更新)

下請法への対応

「下請法には注文書を書面で交付することと書いてあるけど、電子契約は書面をつかわないけれど大丈夫?」という質問を時々お聞きします。

これは大丈夫です。下請代金支払遅延防止法(下請法)の第3条第2項に、一定の要件をみたせば書面にかえて、電子データでの交付でもよいという内容の記載があるからです。

では、その一定の要件とは具体的には何をさすのでしょうか?また一般的に、電子契約導入時に下請法の観点から、どんなことに留意しなければならないのでしょうか?

今回はこのような下請法に関する電子契約導入時の注意点について、法令、ガイドラインに即して考えていきます。まずは関連する法令をご紹介します。

電子契約導入にあたっては、下請法への対応はとても大切なポイントなんだ。法令にも関連する記載が多いから注意する必要があるんだ。

下請代金支払遅延等防止法 第3条および第5条

下請法は親事業者が下請事業者に発注する場合の下請け取引の公正化、下請事業者の利益保護を目的として制定された法律で、親事業者の義務や禁止事項などが定められています。

電子契約導入にあたって特に注意しなければならないのは、注文書の交付義務(第3条)や書類の作成・保存義務(第5条)に関する条文です。いずれも文書は書面であることを求めていますが、一定の要件を満たせWebば書面にかえて電子ファイルによる交付、作成・保存が認められています。

(1) 第3条(書面の交付義務)に関する電子化の要件

  • 政令で定めるところにより、下請業者の承諾を得ること
  • 公正取引委員会規則に定める通信技術を利用する方法によること

(2) 第5条(書類の作成及び保存)に関する電子化の要件

  • 公正取引委員会規則に従うこと

第3条は、下請け業者への書類交付義務だから通常は注文書が対象ね。第5条は取引の記録の保存だから、注文書も含め、注文請書、納品書、検収書、請求書などが対象ね。

下請代金支払遅延等防止法施行令 第2条

上記(1)の第3条の注文書を電子交付する場合は、あらかじめ下請事業者に対し、電子交付方法の種類と内容を提示して、承諾を得ておく必要があります。

下請事業者にどういう方法で電子契約を行うか、きちんと説明して、承諾をとっておかなければならないんだ。 建設業法のガイドラインと同じだね。

下請代金支払遅延等防止法第3条の書面の記載事項等に関する規則第2条

上記(1)の第3条の注文書を電子交付の要件を以下のように、より具体的に示しています。

  • 注文書を電子交付する方法は、以下(a)~(c)いずれかである必要があること
    (a)回線経由でファイルを送る方法(メール、EDI)
    (b)サーバ上のファイルを回線経由で閲覧させ、ダウンロードさせる方法(Webの利用)
    (c)磁気ディスク、CD-ROMなどにコピーして送付する方法
  • 交付された注文書が紙にプリントできること
  • 送付されたファイルが改変されていないこと

注文書に電子署名とタイムスタンプをつけておけば、ファイルが改変されていないことを証明できるわね。

下請代金支払遅延等防止法第5条の書類又は電磁的記録の作成及び保存に関する規則 第2条および第3条

上記(2)の書類の電子的作成と保存について、以下4つの要件を定めています。

  • 訂正、削除の事実、内容が確認できること
  • ディスプレイ、書面に出力できること
  • 取引先名称などでの検索および日付の範囲指定検索ができること
  • 記載が終わった日から2年間保存すること

訂正、削除の事実、内容の確認も大切な要件だ。これは電子帳簿保存法と同じだね。

下請取引における電磁的記録の提供に関する留意事項(平成13年3月 公正取引委員会)

さらに公正取引委員会は平成13年3月30日に「下請取引における電磁的記録の提供に関する留意事項」というガイドラインを発表しています。このガイドラインで独占禁止法とからめて様々な助言をしていますが、電子契約に関連して特に気をつけなければならないと思われるポイントを例示します。

  • Webを利用して電子契約をおこなう場合、下請け事業者がWebで閲覧できるだけでなく、ダウンロードできる機能が必要。
  • 下請事業者に電子契約の利用承諾を依頼する場合は、「費用負担の内容」「電子契約はしない申し出ができること」などを明示する。また、承諾せず電子契約を行わない下請け事業者に対して、不利益な取り扱いを示唆してはならない。
  • 本来は親会社が負担すべき電子契約システムの開発費を下請け事業者に負担させると、独占禁止法における優越的地位の乱用に該当する恐れがある。ただし、システム運用費について下請け事業者が得る利益の範囲内で負担を求めるのはこれにあたらない。

あら、独占禁止法も関係してくるのね。下請業者から承諾をとる時は、費用負担の内容やいやなら紙のままでもいいということを説明しなければならないのね。

電子契約サービスにおける下請法の要件と弊社電子契約サービスでの対応

以上法令、ガイドラインに即してお話してきましたが、その要件の概要と弊社電子契約サービスでの対応をまとめると以下のようになります。

法令・ガイドライン電子契約サービスでの対応
1 下請事業者の承諾 利用契約雛形を準備
2 非承諾者への不利益な扱いの禁止 取引先向け説明資料雛形を準備
3 訂正削除の事実、内容確認 システムで標準対応
4 ファイルが改変されないこと 電子署名、タイムスタンプで対応
5 ディスプレイ表示、書面出力 PDFフォーマット採用で対応
6 取引先名称、日付検索 検索属性の設定、標準検索機能
7 2年間の保管期間 システムで標準対応
8 下請事業者ダウンロード確認機能 システムで標準対応

まとめ

いかがでしたでしょうか?「これは大変だ。面倒くさい。」と思われた方がほとんどかもしれません。

ところが、実はほとんどの要件が、「電子帳簿保存法」や「建設業法」などの電子契約に関する要件と重複しており、下請法対応として独自に行わなければならないものはあまりありません。また、電子契約サービスを利用する場合は、お客様が各種契約を締結し、利用規則を遵守してシステムをご利用いただくことが前提になりますが、ほとんどの要件は各種契約書雛形とシステムとで対応してしまいますので、実はそれほど大変というわけでもないのです。

電子契約導入時には、いろいろな法律への対応を検討しなければならないんだ。下請法、建設業法、電帳法、電子署名法・・・。だから、安心できるベンダーの協力が必要なんだ。

電子契約導入のための20のヒント:目次

1. 法令

2. 技術

3. 運用

「CONTRACTHUB」サービス紹介資料