なぜエンゲージメントサーベイが必要なのか?注意点・実施ステップを解説
転職市場の活発化や、働き方やライフスタイルの変化によって、従業員の「働き方」に対する価値観が多様化しています。人材流出防止策や組織の生産性向上の施策のひとつとして、企業が導入しているのがエンゲージメントサーベイです。エンゲージメントサーベイの意味や活用方法、導入する際の注意点などを解説します。
エンゲージメントサーベイとは
エンゲージメントは契約や約束を意味する言葉で、ビジネスシーンでは「企業と従業員の心的なつながり」を示す言葉として使われます。従業員エンゲージメントが高い状態とは、従業員が企業や自社製品に対してポジティブな感情を持ち、「従業員自らが組織に貢献しようと意識して業務に打ち込んでいる」状態です。従業員エンゲージメントの向上により、離職率の低下や職場の活性化などの良い効果が期待できます。
サーベイは「調査」や「測定」を意味します。つまり、エンゲージメントサーベイとは、企業と従業員との関係を定量化するための調査のことです。
エンゲージメントサーベイによって従業員エンゲージメントを可視化することで、離職率の低下や職場の活性化につながる対策をより効果的に行うことができます。
従業員エンゲージメントの概要や、向上のための取り組みはこちらの記事でも解説しています。
参考記事:従業員エンゲージメント向上による効果とは?メリット、取り組み方法を解説
エンゲージメントサーベイと混同しやすい言葉
これまでも、企業ではさまざまな種類のサーベイが実施されてきました。エンゲージメントサーベイと混同しやすい3つのサーベイについて説明します。
従業員サーベイ
従業員を対象として、職場環境や職場内での人間関係などに関する満足度を把握するための調査です。人事制度や就業規則を改定する際に、組織改善を目的として実施されます。
モラールサーベイ
従業員の「意欲」や「士気」を意味するモラールを調査する手法です。どうしたら従業員のパフォーマンスが向上するかなどの事実情報を集めるために実施されます。
パルスサーベイ
1週間〜1カ月に1回といった短期間で測定するサーベイの手法です。調査を頻繁に実施することで迅速に問題点を把握することが可能です。従業員満足度の向上や職場環境の改善などを目的として実施されることが多いです。
エンゲージメントサーベイの必要性
働き方改革や人材の流動性の高まりなどの観点からも、日本でもエンゲージメントが注目されています。
エンゲージメントサーベイが必要とされる理由
会社と従業員の関係性を定量的に把握するため
エンゲージメントが高まると、従業員の生産性向上や離職率低下につながります。また、組織力を強化するためには、会社と従業員の信頼関係も重要です。そこで、エンゲージメントサーベイによって会社と従業員の関係性を定量的に把握することが必要とされています。
人材流動化が進んでいるため
終身雇用や年功序列といった従来の人事制度から、実力主義に切り替える企業が増えています。同時に、従業員が主体的にキャリアを形成する考え方も存在感を増してきています。キャリアアップによる転職があたりまえになりつつあるなかで、優秀な従業員の流出を防ぐために、エンゲージメントサーベイを導入する企業が増えているのです。
ダブルワークやリモートワークなどの新しい働き方が普及しているため
ダブルワークや週休3日制、もしくはリモートワークなど、新しい働き方が普及しています。従来の週5日出社する雇用スタイルに比べコミュニケーションが不足しがちで、人事部門が従業員や組織の状況を把握することが難しい状態です。そのため、エンゲージメントサーベイを実施してデータから把握することが必要になっています。
取り組むべき組織課題の優先順位をつけるため
複数の組織課題があると、どこから取り組めばよいのかわからないこともあるでしょう。エンゲージメントサーベイを実施して、課題の状態を数値で把握することができれば、優先順位をつけやすくなります。
人的資本経営の取り組みのため
従来は人材をコストとみなす考え方もありました。しかし、2022年5月に経済産業省が公表した、人的資本経営を提唱する「人材版伊藤レポート2.0」により、「従業員を資産として大切にする経営」に対する注目度が高まりました。レポートでは、経営環境の変化に応じた人材戦略を構築することによって、中長期的な企業価値の向上を目指せるとしています。人材戦略に求められる要素のひとつに従業員エンゲージメントが挙げられています。
参照:「人材版伊藤レポート2.0」を取りまとめました|経済産業省
エンゲージメントサーベイを実施したほうがよい組織の傾向
エンゲージメントサーベイを実施したほうがよい組織とは、次のような課題を抱えている企業です。
- 人材育成・人材開発がうまくいかない
- 優先すべき組織課題が見えてこない
- 離職率が高い
- 従業員の主体性が欠如している
組織の課題や従業員が抱える悩みを可視化するエンゲージメントサーベイを実施することで、上記のような課題を数値化できます。測定結果を分析することで注力すべき課題が特定でき、組織全体で課題を共有するきっかけになります。継続してサーベイを実施することで、効果測定としても活用できるのです。
エンゲージメントサーベイの目的と活用方法
エンゲージメントサーベイの目的と活用方法は大きく以下のように分類されます。
従業員と組織の関係性を定量化する
エンゲージメントサーベイは、従業員と組織の関係性を定量化するために実施します。つまり、従業員が組織に抱いている期待と現実のギャップを数値で把握することができます。ギャップを把握し、ワークエンゲージメントの向上や組織の改善につなげることが本来のサーベイの意義です。
なお、ワークエンゲージメントは、活動水準が高く仕事への態度もポジティブで肯定的な状態を示す概念です。ワークエンゲージメントの詳細や向上のためのポイントはこちらの記事でも解説しているので、併せてご一読ください。
参考記事:ワークエンゲージメントとは?定義や高めるためのポイントを紹介
組織の見えない課題や予兆を発見する
課題が表面化するまでには時間がかかることが多く、課題を把握したときにはすでに対処できないほど問題が大きくなっていることが少なくありません。エンゲージメントサーベイを実施することによって、組織の見えない課題や従業員の離職の予兆などを発見することができます。組織の課題を可視化し、改善に向けた施策を早い段階で行うことで、課題解決に向けた道筋が見えるでしょう。
データを人事施策に生かす
すでに取り組んでいる人事施策や評価制度の見直しなどの取り組みに対しても有効です。取り組みをあらためてエンゲージメントサーベイで数値化することで、改善方法がより具体的になります。会社全体で人事上の課題を共有でき、人事施策の改善に効果的です。
データを話し合いに役立てて運営に生かす
エンゲージメントサーベイで数値化したデータを部署やチームにフィードバックし、話し合いに役立てることができます。客観的なデータによって課題の原因や改善点が明確になるため、感情に傾くことなく建設的な話し合いができます。
エンゲージメントサーベイの成功ポイントと注意点
ここからは、エンゲージメントサーベイ実施時のポイントと注意点を解説します。
サーベイ実施時の成功ポイント
目的を明確にする
エンゲージメントサーベイの実施目的を明確にすることが重要です。ツールの導入や調査の実施そのものを目的とするのではなく、離職防止、生産性向上など、具体的にどのような課題を改善するための測定なのかを意識することが必要です。
継続する
エンゲージメントサーベイを1回行っただけでは大きな成果は得られません。一度調査したら終わりではなく、PDCA(計画→実行→評価→改善)を回すことで、課題解決につなげていきます。調査の負荷が大きいと継続が困難となるので、企業と従業員に負担の少ない方法で行うのがポイントです。
迅速なフィードバックをする
従業員に継続して調査に協力してもらうためには、なんのために実施する調査なのかを丁寧に説明し、理解を得る必要があります。また従業員に対しては、どういう結果となったのかも伝えなければなりません。時間が経ってしまうと従業員の興味関心が薄れてしまうので、迅速なフィードバックが必要です。
サーベイ実施時の注意点
「サーベイ慣れ」が発生する
従業員がサーベイ慣れをしてしまうと、適当に答えてしまい正しいデータを取得できなくなる懸念があります。サーベイ慣れを防ぐためには、その都度、従業員に意義と目的を伝えることが重要です。また、協力への感謝を伝えることも忘れないようにします。
コストや時間がかかる
エンゲージメントサーベイは定期的に行うため、毎回の実施コストと、集計や分析にかかる時間が発生します。外部のサーベイサービスを利用する場合は利用料金もかかります。導入前にあらかじめ費用を試算し、自社に合った仕組みを導入するとよいでしょう。
拒否反応が起こる
調査の実施時点でエンゲージメントの低い会社だと、調査に対して「面倒くさい」と否定的な意見を持つ従業員もいます。調査を行う前に、しっかりと意図や目的、従業員の不利益にならないことを伝えなければなりません。
結果が何にも生かされないと不満を招く
調査をしたものの、結果が何にも生かされないと従業員は不満や不信感を抱きます。結果を分析し、エンゲージメント向上のための施策を検討しなければなりません。
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サーベイ実施に向けた7つのステップ
エンゲージメントサーベイに取り組むための7つのステップを紹介します。
- エンゲージメントサーベイを実施するタイミング・頻度を決める
目的に応じて最適なタイミングは異なります。たとえば、組織体制が変わるタイミングでは、組織が変わった直後とその2〜3カ月後に調査をして比較することで、従業員の変化を把握します。
また、頻度も重要です。回数が多すぎるとサーベイ慣れを引き起こしやすくなり、逆に頻度が少なすぎるとデータが不足してしまいます。目的に応じて適切な頻度を決めます。なお、年末や年度末などの繁忙期は十分な回答が得られないおそれがあるので実施を避けるとよいでしょう。
- 質問項目の決定
質問項目は誰が読んでも同じ解釈になるように、明確な質問文にすることが重要です。解釈が人によって異なると正確な把握ができません。会社全体、部門ごとにどんな課題があるのかを予想し、自社の状況に合わせた質問項目を決定します。
- 従業員への説明
調査実施前に、従業員に対して調査の目的や意義、調査が従業員の不利益にならないことを伝えます。
- 実施
回答期間や注意点などを従業員に伝えて実施します。必要に応じて回答期限のリマインドをして提出もれを防ぎましょう。
- 結果を分析し課題を明確にする
会社全体、部門ごとに分析結果を出します。数値結果の良しあしだけでなく、変化量や要因の理解が大切です。人事上の課題や改善点を明確にしていきます。
- 課題解決のための施策検討、フィードバック
明確になった課題に対して、人事施策を検討します。従業員に対しては、「こういった調査結果をもとに次の施策を検討しています」といったフィードバックが必要です。また、問題点や課題について部門やチームで議論することで、従業員も率先して施策に取り組むようになります。
- サーベイを継続的に行う
サーベイを実行したら、改善施策を継続して行います。エンゲージメントサーベイの効果を高めるには「調査から課題解決のための施策の実行」を継続することが重要です。
エンゲージメント向上のために、効果的にサーベイを導入しよう
漠然と問題意識があっても、課題を特定し、かつ課題解決の行動までつなげるのは難しいと感じることもあるでしょう。エンゲージメントサーベイを実施することで、組織が抱える人事上の課題を共有したり、その度合いを数値化したりすることで解決に役立てることができます。
エンゲージメントサーベイは、従業員のエンゲージメントを高める有効な手段のひとつですが、導入するだけでは向上しません。「なぜ実施するのか」「実施によって何を実現したいのか」を従業員に説明し、分析結果をもとに改善施策を行うことで、エンゲージメントを高めていきましょう。
一方でサーベイによるエンゲージメント向上は経営や人事部門等、サーベイを主導する部門に負荷がかかってしまうため、どのように取り組めばよいのか迷う企業も多いでしょう。従業員の悩みの解決/改善をサポートすることで、ワークエンゲージメントの向上や組織改善につなげることができるツールが 「なやさぽ」です。
経営や人事部門の負荷を押さえつつ、社員の本音を効果的に引き出すことができるため、エンゲージメントの向上を狙うことが可能です。
詳しくは下記をご覧ください。