心理的安全性を高める方法とは? 改善への心構えと具体的な取り組みを解説

心理的安全性を高める方法とは? 改善への心構えと具体的な取り組みを解説

企業にとって心理的安全性の低下は、経営の不安定化を招く要因となります。従業員が安心して業務をこなせるようにするためには、心理的安全性の向上を図る必要がありますが、改善に向けてどのような対策を行っていけばよいのでしょうか。今回は、心理的安全性を高めるための考え方や方向性、具体的な取り組みについて解説します。



心理的安全性の全体像については「心理的安全性とは?メリットや効果、高めるための心構えを解説」をご覧ください。



組織の心理的安全性を高めるための取り組み

初めに組織全体として、心理的安全性を高めるための心構えやポイントを解説します。

心理的安全性の向上に向けた考え方

心理的安全性を高めていく前提として、心理的安全性を低下させる4つの不安を始めとした、問題そのものについて理解する姿勢が必要です。まず、心理的安全性を損ねる因子として、次の4つの不安が存在するとされています。

  • 無知だと思われる不安
  • 無能だと思われる不安
  • 邪魔だと思われる不安
  • ネガティブだと思われる不安

上記で示されるように、心理的安全性に関する不安は「業務ができる/できない」「契約がとれる/とれない」のような個々人レベルの問題ではなく、グループレベル(=チーム)において自身の存在がどう捉えられるかに対する不安であるといえます。

個人レベルの問題ではない以上、心理的安全性向上を目指すにあたっては、個人的な甘えや精神性、性格の問題などといった、「根性論」的な考えから脱却し、組織として取り組む必要があります。

つまり、企業の環境についての課題であり、個人で解決できるものではない点を企業は深く理解して取り組む姿勢が求められます。具体的には、上司・部下、チーム内の信頼関係の構築を重視し、誰もが立場と関係なく「モノ言える」企業であることを目指します。

ただしこの場合、「何でも言い合える」関係性が理想的であり、「自分勝手な発言がまかりとおる」というのとは別物であることも明確に示しておく必要があります。

心理的安全性を高めることは意見やアイデアを表明しやすい環境がもたらされることであり、個人的な希望が何でも通されるとい

うことではありません。対立する意見でもお互いに率直に述べ合うことができるのは、相手を信頼している表れであり、感情的にならない関係がベースとなっています。

「発言が疎外感や敵対心につながらない」「真意をくみ取ってもらえる」「関係性に影響を与えない」という心理的安全性が、組織のなかで個人の能力が十分に発揮されるための土壌となります。

組織として心理的安全性の意義と重要性を理解することが、取り組みに向けた初めの一歩と言えるでしょう。

心理的安全性が得られるための環境とは

心理的安全性が得られる環境には、以下のようなポイントがあります。

■ 良好な人間関係

人と人を起点とする円滑なコミュニケーションが図られており、世代間や雇用形態による溝がない

■ 業務へのモチベーションの維持

正当な評価・承認が与えられており、従業員がそれを感じている

■ 平等な発言の機会

チーム内での発言においては、恐怖感やためらいが払しょくされている

■ 相互的なフォロー

障害に対して、お互い助け合いが行われており、孤立しない

■ チームでの取り組み

課題に対して全員で向き合い、全員が当事者意識を持っている

■ 減点ではなく加点での評価

マイナス面からの評価ではなく、プラス面からの評価が受けられる次項ではここで挙げたポイントを踏まえ、心理的安全性が得られる環境づくりに向けた取り組みについて解説します。

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部門マネージャーの取り組み

直接的に個人と向き合う地位にいる役職者の取り組みについて解説します。

心理的安全性を高めるための心構え

まずは持つべき姿勢から見ていきます。

叱責ではなく問いかけをする

部下に対しての接し方は、従業員の心理的安全性に大きく関与します。「なぜできないか」など相手の非を責める言動を控え、相手に考えさせるための問いかけをする姿勢を意識することが大切です。

うまくいかないことに対して、どこに課題があるのか、失敗の原因は何かの問いを投げかけ、さらにどのようにすれば改善ができるかを考えさせるよう流れを作ります。頭から叱責や否定をするのではなく、気付きと次の行動への促しが重要なポイントです。

特に、相手の人格を含めた個人的な否定をするのは厳禁です。決定的な不信のもととなり、関係性を修復できなくなる恐れがあります。

自分の過去をモデル化しない

先達として「自分のときは〇〇した」と成功体験を口にしがちです。しかし過去の成功例が現在に通用するとは限らず、共感を得られない可能性が高いことを心得ておく必要があります。

成功体験は大事な要素ですが、あくまで「相手」にとっての体験が効果となるのであって、上司の自慢は何の役にも立ちません。参考となる事例として示すのであれば問題ありませんが、現時点の状況に落とし込めるものであることが条件です。その場合も「こういうやり方もある」程度にとどめ、選択は相手に任せるようにします。

個性を前向きに認める

心理的安全性を脅かすのは、疎外や否定といった「認められない」状態です。言動について、個性として前向きに認めることで、心理的安全性の向上に役立ちます。

ただし、根拠のない言葉では意味はありません。褒めることは大切ですが、「着眼点が良かった」「君ならではの考察が成功につながった」「先ほどの発言で会議の内容がまとまった」など、具体的に個人の力を認めて褒めるようにすることが重要です。それによって自己肯定感へとつなげられます。

心理的安全性を高めるための具体的な施策

続いて、具体的な施策を挙げます。

■ 1on1ミーティングの実践

定期的な面談により、腰を据えて1対1での会話を行います。コミュニケーションの頻度を増やすことで、信頼関係を強化し、個々の状況を的確に把握することができます。上司が評価をする場ではなく、相手の話を傾聴しながら、内在する意見や不安について話し合うことが大切です。

OKR

目標の設定・管理方法のひとつです。単なる目標設定をするだけではなく、個人の目標管理を通じて組織としての成果につなげるための、組織マネジメント手法として注目されています。

個人の目標を組織の方向性と一致させることができ、目標の重要度を明確にできます。何のための業務なのかが理解しやすくなり、モチベーションの向上につながります。

■ 雑談への積極的な参加

上司としての威厳を重視し、上段から構えていても関係性は構築できません。気軽に呼びかけに応じ雑談に参加するのも、意見を述べやすい雰囲気づくりに役立ちます。雑談のなかでも、個性や発言力に気付かされる場合があります。

■ アイスブレイク

チームが難しい局面にあるとき、場を和らげる、緊張をほぐすための話題を取り入れるのは、上司の役割です。個々の発言を引き出すためには、考えられるようになる心の余裕を与える必要があります。

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人事部門でできる取り組み

人事の担当部門で全社的にできる取り組みについて解説します。

心理的安全性を高めるための心構え

まずは組織としての取り組み姿勢から見ていきます。

組織として公正であること・納得できる制度であること

組織として公正であることを示す一番の方法は、個々の評価を公平に行う体制の整備です。心理的安全性につながる「認められている」という実感をもたらすために、評価制度を工夫し、ときには現行制度からの見直しを図る必要があります。

例えば、個人成果のみに着目せず、チームやプロジェクトごとの評価を取り入れるといった方法もあります。自社の状況に合わせた評価制度を実現するためには、評価点をどこに定めるかを再度検討することも大切です。

個性や多様性を認めて柔軟性のある対応をする

制度を策定、更新する際には、慣例に従って型にはめていないかを確認する姿勢が必要です。これまでどおりがすべて良いとは限らないという意識を常に頭に置き、社員層や業務の現状に合わせて適宜変更ができるように図ります。

また、社会の流れをキャッチしながら、働き方、属性などの多様性に配慮した対応を心がけます。決まりだからできないと決めつけるのではなく、自社の現状や社会の流れに応じて、都度合理的な判断ができるような体制づくりも大切です。

心理的安全性を高めるための具体的な施策

続いて、具体的な施策を挙げます。

■ 多様性についての研修を実施する

マネジメント層、管理部門、さらに一般従業員に向けて多様性を理解するための研修を実施していきます。異なる意見や考え方を受け入れるための下地をつくることで、自由な発言を促します。

■ コミュニケーションの活発化を図る

オンラインツールやSNS導入により、直接顔を合わせることができない場合でも、コンタクトが途切れない職場環境づくりを進めていきます。社内カフェやフリースペース、休憩スペースの充実など、施設面からのサポートも効果的です。

■ チーム編成の組み直し

多くの意見に触れる機会の創出、なれ合いや長期化による人間関係の複雑化を回避するために、チーム編成の組み直しを検討します。プロジェクトごとの集散を定例化していくことで、社内でのメンバーシャッフルによる自由な空気感が生まれる場合もあります。

■ 心理的安全性を測定する

職場の課題を発見していくために、心理的安全性を測定しながら改善に向けて活用していきます。一般的には7つの質問を用いた、アンケートによる点数づけの方法が知られています。

7つの質問については「心理的安全性の測定方法とは?現状を把握し改善につなげるために」をご覧ください。

■ ピアボーナス制度

メンバー間で感謝の気持ちを送り合う仕組みを導入することで、認める気持ちを相互的に伝えられます。周囲からの承認や肯定が得られることで、自己肯定がしやすくなり、自信を持って発言できるようになります。

■ マネジメント層への定期的なフィードバック

メンバーからマネージャーへのフィードバックを、匿名で実施できる仕組みを整備します。管理の仕方に対する不満や疑念を早期に
見いだし、より良い関係構築に役立てられます。

■ 悩み相談の受付体制確立

匿名で個人的な悩みを相談できる仕組みをつくることも大切です。少し離れた立場の第三者に話すことで、悩みを解消できる手段が見いだせる場合もあります。

■ 業務サポートの体制づくり

新人フォローだけではなく、中堅層や、ベテラン層などすべての層を支援するサポート体制を整備します。「今さら聞けない」という雰囲気をなくすためには、「誰でも分からない場合がある」のを前提とする必要があります。FAQ整備、メンター制度など、多様な手法を組み合わせることでより効果を高められます。

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心理的安全性の向上に向けて取り組みに着手を

例えば評価制度自体をすぐに変えることは難しくても、コミュニケーション創出や円滑化に向けた工夫は比較的容易です。心理的安全性が失われると、職場としての魅力がなくなり、働く意欲の低下や離職へとつながる恐れがあります。

心理的安全性の向上は、企業を土台から強化していきます。健全な企業運営に向けて、心理的安全性を高める取り組みに、できることから即時着手していくことが求められます。

心理的安全性の向上につながるサービスとして「なやさぽ」が挙げられます。「なやさぽ」は仕事の悩みの整理を支援し、解決に向けた行動をサポートする新発想のツールです。部下がなやさぽを使って悩みを言語化できれば、上司の方もスムーズに対応することが可能になります。人事の方には、悩みの傾向をレポートとしてお渡しするため、施策に活用していただくことができます。

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