健康経営の取り組み事例と解消される経営課題

健康経営の取り組み事例と解消される経営課題

従来、健康管理は個人の責任と捉えられていました。しかし昨今、従業員の健康に配慮することは企業のコンプライアンスのひとつとして重視されるようになってきています。過労やストレスによりメンタルヘルスの不調を抱える従業員が増加していることからも、従業員の健康管理が企業にとって重要な課題だと言えます。しかし、具体的にどのように取り組んでいくべきか迷う企業も少なくないことでしょう。今回は、企業が健康経営に取り組む前に抱えている課題や、企業の取り組み事例を紹介していきます。

関連記事:健康経営が企業にもたらすものとは?メリットから課題までわかりやすく解説

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健康経営はどのような企業課題を解消するか

健康経営に取り組む前の企業が、抱えがちな課題を紹介します。

長期休職者や離職率の増加

昨今、職場での過労やストレスからうつ病になり、長期休職や退職する人が増加する傾向があります。退職者の増加によって人員が不足し、補うための採用が必要になり、人材採用計画にも影響を与えます。また、長期休職者や離職率の増加は職場全体のモチベーション低下にもつながります。

健康保険料や医療費等の負担増

企業は従業員と折半で健康保険料を負担します。保険料率は法令で定められていますが、医療費全体が膨張すれば、負担は大きくなります。また多くの企業が、医療費の一部を負担したり、休職者に自社独自の休業補償制度を設けたりしています。そのため、心身不調により病院にかかる従業員が増えると、企業の健康保険料や医療費の負担が増加し、経営にも影響が及んでしまう可能性があります。

労働生産性の低下

企業の慢性的な人材不足により、従業員の休日出勤や長時間残業が常態化することで、従業員の体調やメンタル面の不調が表れがちです。心身の不調があると従業員がパフォーマンスを十分に発揮できず、個人だけでなくチームや企業全体の生産性の低下をもたらしかねません。また、従業員の健康状態の悪化による判断ミスや行動ミスから、事故につながるケースもあります。

企業イメージの低下

昨今は、インターネットで簡単に企業の評判がわかる時代です。職場環境が悪い場合は、マイナスのイメージがインターネットに掲載されることもあり、企業イメージの低下につながります。

また2021年4月1日から、常時雇用する労働者数が301人以上の企業において、正規雇用労働者の中途採用比率の公表が義務化されました。このことから、企業における離職者がどの程度いるのか推測することも可能となりました。事業規模が拡大していないにもかかわらず中途採用比率が高い企業は、職場環境が悪いと捉えられる可能性があります。

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企業が健康経営に取り組むことで得られる効果

前章にあったような課題を抱えている企業が、健康経営に取り組むことで得られる効果は次のとおりです。

従業員の休職や離職率の低下

健康経営導入により職場環境が改善されると、従業員の心身の不調の予防にもなり、休職者や退職者の減少が期待できるでしょう。企業が従業員の健康に配慮することで、従業員の企業への貢献意識が高まり「従業員エンゲージメント」の向上にもつながります。また、従業員の職場に対する満足度が高まることで離職率が低下します。

従業員エンゲージメントの詳細や向上のポイントはこちらの記事でも解説しています。

関連記事:従業員エンゲージメント向上による効果とは?メリット、取り組み方法を解説

健康保険料や医療費の削減

企業が健康経営に取り組み、従業員が健康になることで、医療機関への受診率が低下し、その結果、企業の医療費コストが削減します。今後、少子高齢化の影響で医療費の高額化がますます懸念されるなか、医療費削減は企業にとってもメリットです。

労働生産性の向上

職場環境の改善によって従業員が心身ともに健康になることで、業務の効率化が図られ、従業員の労働生産性の向上が期待できます。従業員のパフォーマンスやモチベーションの維持・向上により、職場全体の活性化にもつながるといったメリットもあります。

企業イメージの向上

健康経営を実現している企業は、「従業員の心身の健康に配慮できる企業」であり、取り組みを公表することで、ステークホルダーからの信頼獲得にもつながります。また、経済産業省が主導する「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」に選定されると社会的信頼性が特に高まり、「従業員を大切にする企業」として優秀な人材が集まりやすくなるといったメリットも期待できます。

健康経営銘柄・健康経営優良法人とは

健康経営銘柄とは

健康経営銘柄とは、日本再興戦略に位置づけられた「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みのひとつです。東京証券取引所に上場している企業から「健康経営」に優れた企業が選出されます。優良な健康経営に取り組む法人を「見える化」することで、投資家からの正当な評価を受け、業績向上や株価向上につながることが期待されています。

なお、健康経営に取り組む施策に加え、ROE(自己資本利益率)といった経営状態の健全性も評価の要件に含まれています。2022年3月には、「健康経営銘柄2022」選定企業として50社が選定されました。

健康経営優良法人とは

健康経営優良法人とは、未上場企業でも優良な健康経営に取り組むことで顕彰を受けられる制度のことです。大規模な企業等を対象にした「大規模法人部門(上位500社:ホワイト500)」と、中小規模の企業等を対象とした「中小規模法人部門(上位500社:ブライト500)」の2つの部門があります。

健康経営 取り組み事例4選

実際に健康経営に取り組んでいる企業の事例を紹介します。

事例1:製造業界 従業員の休職や離職率の低下を目指す

高ストレス者への面談で従業員のメンタルヘルスが改善した事例です。

ある企業では、ストレスチェックのデータから高ストレス者、ストレス指数の高い従業員に対し、衛生管理者との面談を促し、面談率の向上を目指しました。また、すべての従業員に対して24時間対応の生命保険会社の相談ダイヤルを周知しました。

結果として高ストレス者および準高ストレス者へのフォローアップ100%を達成 。面談を行った高ストレス者および準高ストレス者のうち、67%がフォローアップ後の面談で良化したと回答しました。従業員のメンタルヘルスが改善することで、従業員の休職や離職率の低下につながることが期待できます。

事例2:保険業界 労働生産性の向上につなげる

従業員の生産性低下の防止としてフィットネスタイムの導入をした事例です。

ある企業では、テレワークの推進により、従業員のフィジカル面(肩こり・頭痛・眼精疲労など)の症状による労働生産性の低下が問題となっていました。そこで、従業員のフィジカル面での改善を目指し、就業時間内にフィットネスタイムを設けました。その結果、健康アンケート調査では、眼精疲労に悩む人の偏差値が25%改善、デスクワークの姿勢の悪さに悩む人の偏差値が25%改善するといった結果になりました。フィジカル面の改善は、労働生産性の向上につながります。

事例3:建設業界 従業員への手厚いサポートで疾病リスクの低減

従業員の生活習慣病の疾病リスクを低減することで、結果的に医療費削減を目指そうとする事例です。

ある企業では、毎年の健康診断で従業員に有所見者が多く、生活習慣病等の重症化リスクが高い状態でした。そこで、35歳以上の有所見者に対して、協会けんぽ「生活習慣病予防検診」を受診しやすいよう社内支援制度の拡充や、女性特有の疾病(子宮がん・乳がん)検診の金銭的補助の拡大などに力を入れました。

さらに、運動系イベントを実施し、従業員の健康への意識向上を目指した結果、定期検診の有所見者率が47%から30%に低下しました。手厚いサポートが、疾病リスクの低減につながったと考えられます。

事例4:自動車業界 企業イメージの向上が実現

従業員の運動機会の増進や食生活の改善の取り組みにより、企業イメージが向上した事例です。

ある企業では、従業員の運動機会の増大のために、万歩計で歩いた歩数を個人・部署別に公表したり、食生活の改善のために社内食堂でカロリー別に選べるヘルシー弁当を提供したりと、社内での取り組みを充実させました 。また、事業所内の体組成計を顧客にも開放 したところ、健康をテーマにした顧客とのコミュニケーション・信頼構築につながりました。その結果、健康経営導入について社外からの問い合わせが増えるといったように、企業イメージが向上しました。

参照:

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健康経営に取り組むことで従業員エンゲージメントが向上する

健康経営を導入すると、医療費の削減や労働生産性の向上といった企業側のメリットだけでなく、従業員にとっても働きやすい職場になるというメリットがあります。従業員にとって働きがいのある職場になれば、従業員の企業に対する帰属意識や貢献意識といった「従業員エンゲージメント」の向上、さらには企業の変革にもつながっていくでしょう。

本文中でも紹介したように、従業員の心身の健康を保つためには従業員が抱えている本音の悩みや課題に対してアプローチすることが必要です。従業員の悩みや課題は所属部署や環境によって異なるため、どのような傾向があるのかをしっかり把握することも求められます。 「なやさぽ」は従業員が抱えている悩みの収集、組織ごとの悩みの傾向把握が可能なサービスです。「なやさぽ」を利用して健康経営に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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